クリーニング品の仕上げポリ袋包装は、他のお客様の衣類との接触を避けるためのものです。保管を目的としたものではありません。
◎冬ものをポリ袋に入れたままにしておくと、夏場に高温多湿の環境になります。
仕上がり品包装のポリ袋は、大切な仕上がり品が運搬中に汚れたり、他の顧客様の衣類と接触したりすることのないように配慮したものです。通気性がないので、ポリ袋に入れたまま保管しますと、夏場の高温期に湿気がこもったままで保管することになり、カビや虫食いを誘発します。必ずポリ袋から取り出して、風乾してから収納してください。
◎合成皮革やボンディング製品は湿気で樹脂が分解します。
ヨーロッパの気候は、夏季に乾燥する傾向がありますが、日本では湿度が上昇します。イタリアファッション製品に多く使われているポリウレタン樹脂は、高温多湿の環境下で加水分解という現象を起こします。保管中であっても通気性への配慮が必要です。
消えない着ジワ実は毛羽立ち
- コットンパンツのシワが消えない
前号で、摩擦によって毛羽立ち下部分が、皮脂などの油汚れで目立たなくかったけれど、ドライクリーニングによって、油汚れが落ち、分繊化した繊維が乱反射して脱色したように見える現象を解説しました。
今回は原理は似ていますが、シワだと思っていたものをいくらアイロンを掛けてもこれが取れない。お客様から「こんなシワも伸ばせないのか」と言われてしまったケースについて解説しましょう。
アイロンを掛けてもこんなシワが取れない
このシワは、コットンパンツの膝裏のシワです。
納品後、お客様から「シワが伸びていないじゃないの」とお申し出がありました。そこで、工場に戻してアイロン掛けしたのですが、いくらアイロンを掛けてもまったく取れません。
●シワではなく毛羽立ち
綿100%の製品で、伸びないシワがあるのでしょうか?シワ加工のようにある種の樹脂加工や高圧加工の場合伸びないものがあります。しかし、この製品の場合、左右の膝裏ですから明らかに着用によるシワに間違いありません。では、本当にこれはシワなのかという疑問がわいてきます。シワで無いのだとすれば、いったい何なのでしょうか?
そこで、実体顕微鏡でこのシワの部分を観察してみました。
シワのような部分を、折り曲げて横から見てみると一直線に仕上がっており、シワの凹凸はありません。つまり、シワは確かにアイロンで伸びているのです。
では、このシワのように見える色の濃いラインは何なのでしょうか?そこで今度は、裏から光を当てて観察してみました。
すると、生地の他の部分より、多くの毛羽が立っており互いにからみ合っているように見えます。
このことから、シワの山の部分が摩擦によって毛羽立ち、毛羽だった繊維が互いに密に絡み合うことによって、このラインのピンクの色が濃くなって見えているということが分かりました。メラミンスポンジで削り取ることができるかもしれません。